020
似蔵
声が、聞こえる。
019
銀時と泰三
「蟻に喰われるなんて冗談じゃねー。蟻に喰われるぐれーなら長谷川さんに喰われたい。つーか寧ろ長谷川さんを喰いたい」
「はぁ? 何言ってんの? 意味全然判んないから!」
ネット上でそんなニュースを見かけて。糖尿って大変だ。
018
似蔵
017
似蔵
016
全蔵
015
全蔵と泰三
大通りで銀時と別れてから、おぼつかない足取りながらも自宅アパートに辿り着いた長谷川は、空に等しい財布の中を探った。
街灯の光の届かない路地裏、指先に触れるのは小銭ばかりで鍵はなかなか見つからない。
「長谷川、泰三さん?」
「うぉわぁ!」
飛び上がって振り向くと、玄関脇に男が一人立っていた。
長い前髪に隠れてよく判らないが見知った顔ではなさそうだ。声にも覚えは無い。
いやそれよりも明るい色の髪の毛に、明るい色のコート。暗闇に同化する筈も無いその姿に全く気付かなかった。酷くイヤな予感に酔いが引いて行く。
「おどかさないでよ、確かに長谷川だけど…お宅誰よ?」
「元入国管理局局長の?」
「!」
咄嗟に、右手が手探りであるはずも無い得物を求める。
ダンッ
その手が何かを掴む前に、背後のドアに叩き付けられた。そのまま一気に利き腕を捻り上げられる。
「あいだだだだだだだ! 折れる! 腕折れるから! ちょっとタンマァァァ!!」
腕にかかる容赦の無い負荷に悲鳴を上げると、腕を捻る力が僅かに緩んだ。
入国管理局の名が出た以上物盗りの線はゼロに等しいが、それでもなけなしの可能性に賭けて長谷川は、ドアにへばり付かされた姿勢のまま背後を伺いながら必死に声をかけてみる。
「あ、あのね、誰だか知らないけど、おじさん家には金目の物なんにも無いから。こ〜ゆ〜コトしても意味無いし。幸いおじさん、君の顔見てないからこのまま…」
ヒヤリと、喉元に押し当てられた厚みの無い、硬い何かに息を呑む。考えるまでもない、刃物だ。
「できれば」
耳元の、ごく近い所で声。背後から、肩口に顎を乗せているのだろう。右肩が重い。
「無傷で、生かして連れ帰れって依頼なんでね、大人しくしてくれると助かるんだけど」
続
幕府からの追っ手に全蔵さんご指名入りましたァ! みたいな。